空中田んぼは田植えの準備中。

 空中田んぼ。ぼくはこの山の中腹に広がり周りの山を見下ろすこの田んぼを、ちょっと空中都市マチュピチュを連想してこう呼んでいます。

 日南市の小松山の石積みの棚田。坂元棚田へ休日にチャリンコを漕いで行ってきました。
田んぼでは耕運機で代掻きの準備中でした。

 この棚田にはもう何度も来ているけれど、この石積みの田んぼと水路は何度見ても感心します。
昭和の初期に作られたようだけど、自然石を積み上げた石垣がとても凛々しくて優しく美しい。
かっこいいなぁと思います。これがコンクリートの擁壁だったらそこまで感動しないだろう。
なぜだろうか。・・一つ一つ積み上げた人の手作業が連想されるからだろうか・・いやそれにはもう一つピンとこないなぁ。
と、考えていくと一つの仮説ですが。
 自然石の石積みを見ていると一個一個は形はバラバラです。コンクリート擁壁やコンクリートのケンチ石の工業製品のように均一ではありません。
当時はまだその人工的な材料は少なく高価だったので、自然にあるものを活かして構造物を作り上げるという技術でした。
大型のトラックなどの輸送手段はないので、工事現場近くの材料を活かすということになります。この自然石も小松山に転がっていた石なのでしょう。
 そのふぞろいの材料を使って垂直に積み上げて、何十年も大雨に耐える石垣の棚田を作り上げるというのはやっぱりすごいなぁと思います。
ふぞろいの材料を使って全体を美しく揃えるということ。しかも頑強に。


 以前から石垣が好きなのですが、特に自然石。その模様が薪を積み上げたときも似ている。
この断面も好きなんですよねぇ・・ふぞろいの美というものがあるように思われます。

ま、それはさておき・・・
田んぼにはトラクターが入って土を耕していて、その作業を傍から見守るおばあちゃんがいました。
そのおばあちゃんと話をしたのですが、数年前にご主人を亡くされ一人暮らし、そしてご自身も高齢のため、なかなか田んぼの管理も難しくなったとのこと。
しかし、日南の街に住む息子さんが仕事の合間にこうやって農作業をしにやってきてくれるそうです。
 おばあちゃんトラクターに乗って作業している息子さんを見ながら「よくぞ外に出さんかった(息子さんを都会に出さなかった)」と言っていました。
話によるとおばあちゃんの田んぼは、この棚田の中で11枚(ヶ所?)あるそうです。ご先祖から受け継がれてきたそうですが、年代から想像するとこのおばあちゃんのお父さんか、おじいさんたちがこの棚田を造ったのではないかと思われます。
「もう最近は歳をとってしもて、石垣の草もよう取らん・・」
この棚田がこの先どこまでできるか「どうだろうねぇ・・」と。田んぼを維持して管理していくのは大変なんです。

棚田の中央を貫く石でできた水路には小松山からのきれいな水が勢いよく流れています。
わたくしはそれを見て感じた言葉を口にしました「ここの米はうまかでしょうねぇ」
おばあちゃんの顔がパット弾けて「そりゃもう うまかよ!」

都会に出ていたお孫さんも地元に帰ってきて近くで働いておられるとのこと・・そのお孫さんの主催で今月、5月31日(土)には水を張った棚田の田んぼで泥んこ遊び大会が開催されるそうです。なんかいいなぁ。
わたくしも仕事が入っていなければ行きたいのですが・・・興味のある方いかがですか、楽しそうですよ(^^)v
 こんな先人の偉大な足跡の中で無邪気に遊べるなんて、なんと贅沢なことでしょう。




m.noda